気晴らしをするということ~その3
sinsingです。
さて、山村修氏の著書「気晴らしの発見」の紹介をもとに、気晴らしの効用や方法をここ数回書いてきました。またぞろその続きを…
山村氏はコレステロールの悪化や不眠のもととなるもの-ストレス-を、梶井基次郎の「檸檬」の一節を引用しながら『不吉な塊』と表現しています。梶井と山村、このような表現力を見事だとは思いませんか。1925年(大正14年)1月1日発行の同人誌に代表作「檸檬」は発表されます。梶井は大正時代にまさしくストレスのことを表現していたのです。
体に起きる変化
みなさんのなかに『不吉な塊』はありませんか? ときにその塊が胸の中に、あるいは胃の中に重く沈み込んで動かなくなることはありませんか? そうなったとき、わたしたち人間の体に大きな変化が生まれ始めます。体に起きる変化について著者の山村氏は「トム氏の実験」という挿話を引いています。1950年ころのアメリカ、コーネル大学での話。
9歳だったトムは、あるとき熱いクラムチャウダーを飲み込み食道に大変なやけどを負った。腹部に穴を開けて管を通し、直接胃に食物を送るような手術を行った。しかし手術はうまくいかず、トムの腹に開けた穴からは胃の粘膜が露出し、観察できる状態になってしまった。その後、亡くなるまでの15年間ずっと。
叱られて萎縮したとき、トムの胃の粘膜は白くなるのが観察された。怒りを感じたとき、トムの胃の粘膜は真っ赤に腫れ上がり、胃液の量も急増するのが観察された…。
人間の体とはなんと悲しいものなのでしょうね。気持ち一つで体が勝手に反応してしまう。内臓が反応してしまう……。 わたしなぞは、呼吸が浅くなる、冷や汗が出る、胃の強い不快感、夜中の覚醒などなどの変化があっという間に現れてきます。みなさんにはどんな変化が現れますか?
だからこそ
だからこそ現代人はこの「不吉な塊」-ストレス-を、自在に操る術(すべ)を持たないと、心の健康も体の健康も保てないのですね。みなさんも苦しくなったら山村修氏の「気晴らしの発見」を手に取ってみてください。ストレスを操るための何かしらのヒントが得られるのではと思います。
山村修氏は有名な書評家でもありました。私自身は『禁煙の愉しみ』『遅読のすすめ』『気晴らしの発見』で、その博学に驚き、そのやわらかな筆致に感銘し、そのテーマ・内容から多くの示唆をいただきました。残念なことに氏は2006年8月、癌のため56歳で亡くなりました。若くしてのご逝去、さぞかし無念だったことと思います。ご冥福をお祈りいたします。
世の中は
世の中は大型連休に入りました。遠く離れている我が子らはどのように過ごしていることでしょう。コロナで帰省はできません。心配であり、近況も含めていろいろ聞きたいところでもありますが、「大学を卒業した後はなるべく干渉せずに」のモットーのもと、黙って音信を待つこととします。
わが地域では田植えの準備が真っ盛りです(今日は雨ですが)。数日前のウォーキング途中の写真をアップします。早期退職した我が身には、多くの方の働く姿がまぶしく見えてしまいます。